このページの先頭



ここからこのページの本文


ノルディック複合

Nordic Combined
  1. トップ
  2. ニュース
  3. 写真ニュース
  4. 結果
  5. 選手名鑑
  6. 競技メモ

紙面復刻:河野の意地!大逆転銀メダル

<冬季五輪リレハンメル大会:1994年2月20日日刊スポーツ紙面から>

 河野孝典(24=野沢温泉スキークラブ)が、4位スタートからの逆転で銀メダルを獲得した。3位でスタートしたビーク(23=ノルウェー)と激しい2位争いを展開したが、残り600メートルで抜き去り、そのまま逃げ切った。複合個人では、日本人としてオリンピック初のメダルを獲得。荻原の陰に隠れてきた河野が五輪の大舞台で初めてスポットライトを浴びた。前半ジャンプで6位だった荻原健司(24=北野建設)は二人を抜いて4位に入り、団体金メダルへの手ごたえをつかんだ。1位はルンドベルグ(24=ノルウェー)だった。

 14キロ地点。ゴール前の最後の上り坂で、河野が最後の仕掛けに出た。スタート2キロ地点から続いた「銀」をめぐるビークとの壮絶なデッドヒート。この地点までで3度抜いて、3度抜き返されていた。「仕掛けるのが早いとも思ったけど、相手は病み上がりだから」。上りでもたついていたビークを、あっさり抜き去る。最後の右ターン。満員の観衆とゴールが視界に入った。

 派手なことが嫌いな男が、右手を2度、最後は両手を突き上げながらゴールに飛び込んだ。その差0秒8。たった60センチだった。前半ジャンプは4位。上杉尹宏ヘッドコーチ(51)からは「追うからといって、気持ちで焦るな」と指示を受けたが、前半のリードを守り切るいつものW杯レースとは違って、追い上げなければメダルはない。「前回五輪の“金”は健司と三ケ田さんで取ったようなもの。この“銀”は自分の力。自分だけの力」。いつもは常に控えめな河野が、誇らしげに言った。

 前半ジャンプを失敗してメダルが絶望だった荻原の穴を、これまで2番手でしかなかった男が、意地でカバーした。身体能力は複合勢NO・1。普通の人で10%、マラソン選手でも5%が目安とされている体脂肪率が3・8%と抜群の能力をもちながら、これまでは常に、陰の存在だった。昨季はW杯や世界選手権の団体戦で、アンカーを、とコーチから何度も打診されながら、目立つなら個人で、と断ってきた意地が今、やっと報われた。

 観客席で40分間、日の丸を振り続けた父孝司さん(61)が駆け寄ると「ありがとう。すごく、うれしいよ」と声を弾ませた。そして、もう一人、この結果をいち早く知らせたい人がいる。4年越しの交際を続けている恋人、古川敬子さん(26)だ。

 スイス航空でスチュワーデスをしている古川さんとはアルベールビル五輪の前年に知り合い、結婚を前提として、真剣な交際を続けている。海外で試合があるときは時折、会場まで応援に駆けつけてくれる。団体で金を獲得した前五輪の会場にも、古川さんの姿があった。W杯初勝利を挙げた昨季のトロンハイム大会も、古川さんの声援を背に受けてハッスルした結果だった。結婚については「まだ選手としても完成されていない男ですから」と、具体的なことは決まっていないが、河野にとっては、勝利の女神なのだ。

 恋人の声援で張り切る現代っ子らしい面とともに、現役選手には珍しい学者肌のタイプでもある。早大の卒論は「スキーの複合競技におけるトレーニング」。大学3年からパソコンに夏場の練習データを入力している。「忙しくてデータを分析するところまではいかないが、大分、参考にはなっている。一昨年の夏から冬への体づくりが順調になったのは、そのおかげ」と言う。

 大きな仕事を一つやり遂げた河野だが、今五輪にはもう一つ、大きなヤマが残っている。団体戦の金メダル死守だ。全日本スキー連盟の池上三紀複合部長は「河野にはエースとして頑張ってもらわなくちゃね」と大きな期待を寄せる。日本選手としては初めて冬季五輪で2個のメダルを手に入れた男は、「ノルウェー勢が調子を上げているけど、僕の銀メダルよりも確率が高いでしょう」とV予告で締めくくった。

 [2010年2月26日2時41分]


関連ニュース


このニュースには全0件の日記があります。



キーワード:

河野孝典


ここからフッターエリア

nikkansports.comに掲載の記事・写真・カット等の転載を禁じます。
すべての著作権は日刊スポーツ新聞社に帰属します。
(C)2024,Nikkan Sports News.