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37歳葛西、143m大飛行/ジャンプ

<スキー・ジャンプ:STV杯>◇10日◇札幌・大倉山(HS134メートル、K点120メートル)

 37歳のメダリストも夢じゃない。バンクーバー五輪代表を確実にしている葛西紀明(土屋ホーム)が、大飛行で国内2連勝を飾った。1回目に134・5メートル、2回目に最長不倒の143メートルを飛び、295・5点で6大会ぶり3度目の優勝。W杯でも優勝経験のある8位アンデシュ・バルダル(ノルウェー)ら外国勢や日本のW杯組を寄せ付けなかった。五輪開幕まで約1カ月。上昇気流に乗った大ベテランに、6度目の五輪でまだ手にしていない個人メダルが見えてきた。

 もう誰も止められない。1回目に1位につけた葛西の2回目。伊東らW杯組が130メートル級のジャンプで飛距離を伸ばしたが、それも強さを際立たせる演出でしかなかった。最後に飛ぶとヒルサイズを大きく越える143メートルの別次元のジャンプで国内2連勝を決めた。大歓声に37歳が高々とスキー板を掲げて笑顔でこたえた。「途中で頭が真っ白になった。最高にいいジャンプ」と笑った。

 国内大会はW杯と比べてスタートゲートが高い。スピードが出やすく、いい風をもらうと飛び過ぎる危険がある。葛西は最後から2番目に飛ぶ伊東と相談し、ゲートを2段(1メートル)下げた。ゲート1段で、飛距離で3、4メートルほどの差が出るが、それでもW杯優勝経験のある、8位に入ったバルダルや岡部、W杯組を相手にしなかった。「自分でもすごいと思う」と自画自賛した。

 「あんまり良くなかった」という1回目の滑りから、尻の位置を1、2センチ上げた。より前傾姿勢になりフォームが安定しないが、力を多くカンテ(飛び出しの部分)へ伝えられ、より飛距離を伸ばすことができる。今季、さらに世界へ近づくため取り組んできたフォーム。2回目に伊東を時速で0・6キロ上回り、ジャンプ台記録に2メートルまで迫った。「このジャンプならW杯でも6位くらいに食い込めるかな」と、手ごたえを口にした。

 3日のW杯インスブルック(オーストリア)大会では、今季初のシングル順位となる9位。37歳はいまだに進化を続けている。過去5度の五輪でメダルは94年リレハンメル大会団体銀だけ。個人でのメダルはない。全日本スキー連盟の斎藤智治ジャンプ部長も「よくなってきている。今なら世界でも通用する」と太鼓判を押す。「世界の上位とはまだ差があるが、ジャンプを確立していけば到達できると思う」。日本人史上最多6度目の大舞台が、悲運のエース返上の場となる。【松末守司】

 [2010年1月11日9時50分 紙面から]


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