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多英「ぎりぎりで戦うのが自分らしい」

 フリースタイルスキー女子モーグルの里谷多英(33=フジテレビ)が13日(日本時間14日)5度目の五輪に挑む。長野の金から12年。次のソルトレークシティーも銅。しかしその後の道は平たんではなかった。最近の口癖は「ぎりぎりのところで戦うのが今の自分らしい」。土壇場まで追い込まれてこそ真価を発揮できると信じている。

 15位で終わった3度目のトリノ大会後はけがと、やる気の低下で2シーズン、実戦から遠ざかった。「これで駄目だったらスキーを辞める」。昨年1月、覚悟を決めて挑んだ国際大会で3位入賞するなどし、カナダにやってきた。

 「多英の根っこにはいつもモーグルがある」。長野五輪モーグル代表で20年来の友人三浦豪太さん(40)は言う。「浮き沈みの激しい人生。そこで、戦う気持ちを10年以上保てるのはモーグルが好きだから」。

 三浦さんは1年前、札幌のゲレンデで1人で練習中の彼女を訪ねた。一緒に雪を固めて、飛び上がるためのエア台を作り「ヘリコプター」(横1回転)の練習に取り組んだ。「盛り上げてやりたかった」という。

 上村愛子(30)が優勝し、五輪内定を早々と決めた昨年3月の世界選手権。9位に終わった里谷は試合後、トレーナーの遠山健太さん(35)に「来月からお願いします」と声をかけた。

 引退がうわさされていた前年も聞いたせりふだった。そのときはジムに顔すら出さなかった。「今回も正直、話半分だった」。だが違った。すぐに持久力など基礎練習と、ジャンプなどモーグル専門のトレーニングを1週間おきに繰り返す日々が始まった。

 「すごい集中力。多英のおしりの筋肉の付き方を見れば、トレーニングの成果が分かる」。遠山さんはうなる。

 「多英はファイター。アスリートとしては優等生です。今の自分にはスキーしかない、と思っているのかもしれない」。

 [2010年2月12日7時28分]


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