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Freestyle Skiing大工の遠藤が史上初の入賞/モーグル
<バンクーバー五輪:男子モーグル>◇14日(日本時間15日)◇サイプレスマウンテン
日本男子モーグル界に、新星が誕生した。19歳の遠藤尚(忍建設)が、25・38点で7位入賞を果たした。日ごろは、宮城・名取市の建設会社で型枠大工などの仕事をしながら練習する高卒1年目の無名選手。W杯も全21戦中、1度しか決勝進出の経験がなかったが、初出場の五輪で日本男子モーグル勢初となる入賞。女子が注目されるモーグルで、14年ソチ五輪のメダル候補に浮上した。
怖いものなんて、何もない。予選を8位で通過した遠藤は言った。「守る気なんて、さらさらない。思い切って滑るだけ」。決勝は、攻めた。第1エアは体軸を斜めにして飛ぶ大技「Dスピン」、第2エアはバックフリップ(後方宙返り)を決めた。フィニッシュと同時に右手で小さくガッツポーズをつくった。
全員が滑り終え、日本男子初の7位入賞。07年12月にW杯へ初参戦して以来、決勝進出は1度だけで、最高位は10位。今季のW杯ランクは、出場30人中、下から8番目の28位。そんな伏兵が、世界の上位に食い込んだ。「オリンピックパワーです」。世界から注目される大イベントを、19歳は力に変えた。
昨年4月、忍建設(宮城県名取市)に入社した。兄がアルバイトをしていた縁で、福島・猪苗代高3の夏に採用を直訴した。「スキーも仕事もやりたいんです」。仕事はコンクリートを所定の型に打ち込むための仮設の枠などを造る型枠大工。スキーシーズンが始まるまでは、午前は仕事、午後は練習の日々だった。「スキーだけでは、だらけちゃう。手に職をつけたかったんです」。
09年6月、宮城県柴田郡にオープンした「ウオータージャンプ宮城」は、遠藤も開設に携わった。中村忍社長(42)の自宅に住み込み、そのジャンプ台で夏はエアの練習を繰り返した。178センチと外国勢に見劣りしない体で繰り出した豪快なエアの得点は、メダリスト3人に続く4位。地道な努力は、晴れ舞台で実を結んだ。
スタンドで見守ったモーグル経験者の中村社長は、遠藤が第2エアを跳ぶ前にガッツポーズを見せ、高得点を確信した。不景気の中、スキー選手を採用した理由について「彼の人間性にほれた。妥協しない男ですね」と、仕事と練習の両立ができる熱心さを褒めた。
実家は、猪苗代でペンション「見鳥」を営む。「来ていただけるとうれしい。親の援助や支えがなかったら、こんなことはなかった。本当に感謝です」。男子代表4人のうち、最も実績に乏しかったが、大きな恩返しができた。「次はもっといい色のメダルを取りたい」と4年後の活躍を誓った。【佐々木一郎】
[2010年2月16日9時39分 紙面から]
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