このページの先頭



ここからこのページの本文


メダル候補者たちの武器

カーリング本橋麻里

2009年11月26日

カーリング本橋麻里
日本代表決定戦でストーンを投げる本橋麻里(09年11月5日)

 カーリングの女子日本代表、チーム青森のマリリンこと本橋麻里(23=NTTラーニングシステムズ)得意の「ダブルテークアウト」が、バンクーバー五輪のメダル獲得へのカギとなる。ハウス(円)内にある相手の2つのストーン(石)を同時にはじき出し、一気にピンチを脱するのが「ダブルテークアウト」。7位入賞したトリノ五輪以上に攻撃的な戦略で挑むチーム青森を象徴する“武器”だ。

 4年前のトリノ五輪で、チーム青森は、守備的な戦略で世界のトップと互角に渡り合った。しかし、この4年間で「世界はどんどん攻めるプレースタイルに変わってきた」(阿部晋也コーチ)という。トリノ五輪から3人のメンバーが入れ替わった新生チーム青森も、攻撃的な展開を得意とする。その象徴が、各エンドの中盤で見られる本橋のダブルテークアウトだ。

 16日のパシフィック選手権(長野・スカップ軽井沢)の1次リーグ中国戦。2-2で迎えた第3エンドの本橋の2投目。スピードに乗った石が、ハウスの中にある中国の2つの石を円の外へとはじき出し、ダブルテークアウトが決まった。相手の石が円の中にたまっていくと、大量失点につながる。そんな状況で1個ずつ確実にでなく、まとめてはじき出すのがダブルテークアウト。当てるスピードと角度を間違えると、あっという間にピンチに陥る。リスクは大きいが、本橋は「リスクがあるショットほどやりがいがある」。中国戦では本橋のショットで後攻の中国の第3エンドを1点に抑えて波に乗り、09年世界選手権優勝チームを7-5で撃破した。

マリリンのダブルテークアウト

 ダブルテークアウトを決めるには、重さ約20キロの石を“高速”で滑らせないといけない。ショットの種類にもよるが、通常、石は2本のホッグラインに挟まれたエリア(約21・95メートル)を10秒強で通過する。その通過タイムが、本橋のダブルテークアウトになると6~7秒。時速にして通常8キロ前後のショットが、11~13キロにスピードアップする。速さと同時に、針の穴を通すような直線的なコントロールも必要で、阿部コーチは「本橋はそれができる世界でも数少ない選手」と言う。

 そんなスーパーショットを生み出すには、オフシーズンの基礎体力作りが欠かせない。本橋は「体力と体幹がしっかりしていないと石に体が振り回される」と話す。これまで1~2回だった基礎体力トレ用の夏合宿を今年は4回に増やした。1日3~4時間、スタビリティートレーニングを中心に腹筋など体幹を集中的に鍛えた。

 本橋は他の選手と比べて投げる時の姿勢が低い。左足を立て、右足を伸ばした窮屈な姿勢で「石と同じ位置に視線を落とすことで、コースをきちんと見ることができる」。昨年より10センチほど姿勢を低くし、ダブルテークアウトの精度を上げた。動きの少ない競技にも見えるが、シーズンが終わると「骨盤の左右の位置がガタガタにずれてしまう」(本橋)ほど。骨盤のバランスが崩れると、力が石に伝わらず、骨格のゆがみを矯正する整体によるケアは欠かせないという。

 五輪出場10カ国のうち、日本を含む世界トップの5~6カ国の実力は「だんご状態」(阿部コーチ)。攻撃的な戦略ではセカンド、サードによる攻防によって明暗が分かれる。セカンド本橋のこん身のダブルテークアウトが決まる時、悲願のメダルが見えてくる。【吉松忠弘】

 ◆スタビリティートレーニング 体の左右のバランスを矯正するエクササイズ。自分の体重を負荷にして腹筋などを鍛える。特別な器具は必要なく、スペースも取らず、手軽で安全と言われている。

カーリングの主なショット

カーリングのショット

  • ドロー
    石をカール(回転)させて円の中などに石を止めるショット。
  • カム・アラウンド
    置かれている石の後ろに、軌道が曲線を描くように回り込んで止めるショット。前の石にガードされ、はじかれにくい。
  • フリーズ
    円の中にある石にピタリとつけるショット。石がくっついていると、はじき出されにくい。
  • ピール
    置かれている石に当てて、自分の石と当てた石の両方ともに円の外に出すショット。円の中に多くの石を残したくない時に使う。
  • ヒット・アンド・ステイ
    置かれている石に当て、自分の石は、その場に止めるショット。
  • ヒット・アンド・ロール
    置かれている石に当て、投げた石は、他の場所に動かして止めるショット。
  • レイズ・テークアウト
    置かれている石に当て、その石で、もう1つの石をはじき出すショット。投げた石と、最初に当てた石は円内に残す。

用具アラカルト

 日本で製造されておらず、すべて輸入。チーム青森はカナダ遠征の時などに購入することも多い。

  • ストーン(石)
    直径約30センチで重さは約20キロ。スコットランドのアルサクレイグ島の花こう岩でつくられる。1個約10万円。試合時は会場や大会側から提供されたものを使い、マイ・ストーンは使えない。
  • ブルーム(ブラシ)
    石の進行方向の氷上をスイープ(掃く)する道具。掃くことで、氷上のツブを溶かし、石の滑りを良くして距離を伸ばしたりする。合成樹脂から豚毛や馬毛のものまである。マイ・ブルームはある。
  • シューズ
    右投げの場合、左の靴底は、投球動作で滑るようにフッ素樹脂加工が施されたり、ステンレス素材のものもある。右の靴底には滑り止めの円状のくぼみが開いている。スイープの時は、滑らないように左の靴の上にスリッパのような形のグリッパーを履く。

カーリングの五輪展望

 2月16日から26日まで、10カ国がメダルを争う。日本は1次リーグで米国、カナダ、中国、英国、ロシア、ドイツ、スイス、スウェーデン、デンマークの順に対戦。1次リーグの上位4カ国が24日からの準決勝に進む。世界選手権の08年優勝のカナダ、同09年優勝の中国が若干リードしているが、上位の実力は伯仲している。日本は08年の世界選手権の準決勝で延長の末、カナダに敗れ、3位決定戦でもスイスに敗れたが、97年以来の2度目の史上最高位の4位に食い込んだ。09年の世界選手権は出場権を獲得できなかった。過去の五輪で日本女子は長野=5位、ソルトレークシティー=8位、トリノ=7位。

カーリングのルール

  • 人数
    出場できるのは1チーム4人。基本的にリード、セカンド、サード、スキップ(主将)の順に石を投げる(滑らせる)。
  • 試合方法
    相手と交互に1人が2度、石を投げる。スキップがコースなどを指示、他の2人は石の進行方向をブルーム(ブラシ)で掃いてスピードなどを調整。1回の攻守はエンドと呼ばれ、試合は10エンド。最初の先攻後攻はコイントスで決まり、2エンドからは前のエンドで点を入れたチームが先攻。後攻が有利。各チームの持ち時間は73分で、オーバーすると10エンド終了前でも負け。
  • 得点
    1エンドで両チームが投げ終わって、ハウスの中心に最も近いところに石があるチームが勝ち。負けたチームのハウスの中心に最も近い石の内側にある、勝ちチームの石が個数が得点。

◆本橋麻里◆ もとはし・まり。1986年(昭61)6月10日、北海道北見市(旧常呂町)生まれ。常呂小6年でカーリングを始める。04年にチーム青森の前身のフォルティウスに入る。07年3月に青森明の星短大を卒業し、08年に日体大に進学した。160センチ、57キロ



ここからフッターエリア

nikkansports.comに掲載の記事・写真・カット等の転載を禁じます。
すべての著作権は日刊スポーツ新聞社に帰属します。
(C)2017,Nikkan Sports News.