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愛子の信念 美しく速く安全策より高得点

<メダル候補たちの武器:上村愛子(1)>

 フリースタイルスキー女子モーグルの上村愛子(29=北野建設)は、「ターン(滑り)」を武器に10年バンクーバー五輪の金メダルを狙う。06年トリノ五輪で披露した3Dエア「コークスクリュー720」は封印中。より得点比率の高いターンに磨きをかけ、3月の世界選手権では2冠に輝いた。上村のターンは何が優れているのか、なぜターンを重視するのか? 連載「メダル候補たちの武器」で迫った。

 上村の滑りは、速く、美しい。足をバネのようにしてコブを吸収し、斜面を一気に滑り抜ける。その技術は今、世界NO・1と言っていい。10年バンクーバー五輪でも審判を務める田中千香子氏は、上村のターンについて「上体がぶれないし、コブを吸収できる。スキーの板を縦にして、すごくスムーズにスルスルと来る。見ていて危ないところがないターンです」と指摘する。この滑りが評価され、3月の世界選手権では1人で滑るモー

グル、2人で争うデュアルモーグルの2種目を制した。

 上村は「自分の滑りはどこが優れていると思うか?」の問いに「よく分かりませんが、大切だと思っていることは、スタート台に立った時、スキー板をコブに当てていこうと思う(気持ちの)弱さがゼロです。そういう気持ちで良かったなと思います」と続ける。

 このコメントをかみ砕くと、こういう意味になる。板をずらしてコブにぶつければ、スピードが殺され、安全に滑れるが、上村はこれをよしとしない。スキーの制御が難しくなるが、板を縦にして雪面をえぐっていく。これこそが、得点に直結する「カービングターン」。適度に前傾し、技術でスピードとスキー操作を両立させている。これがターンで点を稼げる一因だ。

 06年トリノ五輪は、難度の高いエア「コークスクリュー720」(斜め2回転)を決めながら、5位に終わった。エアの得点だけならメダル圏内だったが、ターンがおろそかになり、スピードも出なかった。03-04年シーズンから3Dエアが解禁になり、当時のコーチのドミニク・ゴーチェ氏がエア重視の方針を打ち出した事情もあった。今は違う。コークは跳ばず、難度を抑えたバックフリップ(後方1回宙返り)を使い、ターン重視の戦略のもとにレースを組み立てている。

 もともと、モーグルの採点は30点満点で、ターンが15点、エアが7・5点、タイムが7・5点。採点比率は普遍だが、時代によって審判が何を重視するかは流行もある。以前はエアだった。昨季からは、優れたターンに、しっかり点を出そうという方向性が定まった。今、世界のトレンドと上村の滑りが、ぴたりと一致している。

 トリノ五輪後にコーチに就任したヤンネ・ラハテラ氏は、ターンの名手として知られる02年ソルトレークシティー五輪金メダリスト。上村は「ヤンネさんに同じことを言われても、なかなかできない期間が2~3年あった。そうして手に入れたものは、なかなか崩れない」と完成度の高さに手応えを得ている。

 ターンが安定すれば、エア台にスムーズに入れる。スピードも出る。基本の滑りが上達することは、すべてがプラスに作用した。10月のスイス合宿では、上村の滑りをライバル国がビデオに撮って研究していたという。それほどマークされているが、一朝一夕に身につけられる技術でないことも確か。4度目の五輪でのメダル取りへ、戦略に間違いはない。【佐々木一郎】

◆上村の五輪成績◆

 ▽98年長野五輪7位(18歳) 予選は13位で通過し、決勝は7位入賞。「多英さんが1番になってくれたことが、自分のことよりもうれしい」。

 ▽02年ソルトレークシティー五輪6位(22歳) 予選を4位で通過したが、メダルには届かず涙。「4年間が終わったんだな。次の五輪? 元気だったら帰ってきたいですね」。

 ▽06年トリノ五輪5位(26歳) 予選を5位で通過も、順位を上げられなかった。「長いなー。そろそろ(メダルを)もらえると思ったんだけど」。

 [2009年11月12日12時0分 紙面から]


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