フィギュア
Figure Skating高橋、荒川パターンSP3位/フィギュア
<バンクーバー五輪:男子フィギュアスケート>16日(日本時間17日)◇ショートプログラム◇パシフィック・コロシアム
フィギュアスケート男子の高橋大輔(23=関大大学院)が、ショートプログラム(SP)で自己ベストの90・25点をマークし、3位と好発進した。首位プルシェンコ(ロシア)から高橋まで0・60点差、90点台に3人がひしめく、史上最もハイレベルな争いとなった。小差の3位発進は、前回06年トリノ五輪女子金メダルの荒川静香と同じ展開。18日(日本時間19日)のフリーで大技の4回転を決め、日本男子初のメダルを「金」で決める。また織田信成は4位、小塚崇彦は8位につけた。
高得点の確信があった。演技を終えた高橋は、満面の笑みを見せながら右手で大歓声に応えた。「キス&クライ」では右手で何度もガッツポーズをつくった。目を凝らして見た電光掲示板には、自己ベストを0・3点更新する、自身初の大台突破の90・25点が表示された。五輪連覇を狙う首位プルシェンコとわずか0・60点差。「いい緊張感を持って滑ることができた。フリーでもあまり緊張せずにできると思う」と、余裕を漂わせた。公言し続けた金メダルへの自信を見せた。
4回転を跳ばなかった高橋が、4-3回転の連続ジャンプを決めたプルシェンコと互角に戦った。3つのジャンプはすべて成功。完ぺきに演じきった。さらにライサチェクも完ぺきな演技を披露し、3人が90点台という異次元の戦いに突入。プルシェンコは技術力、ライサチェクは表現力で高橋を上回るが、総合力に秀でた高橋がフリーで4回転を決めれば、頭1つ抜け出せる。「4回転は男子の醍醐味(だいごみ)。(98年)長野以降、五輪王者は全員4回転を決めてきた。僕にとっては必要なもの」。メダル狙いの安全策は取らず、あくまでも金メダルだけを狙う。
小差のSP3位はちょうど、トリノ五輪の荒川と同じ展開だ。その荒川が師事した栄養士の石川三知さんに昨年7月から指導を受けて、究極の肉体に仕上がった。石川さんは大阪を練習拠点とする高橋のため、週1回ペースで横浜から大量の食材を持って出向いた。1度にスーツケース2つ分にもなる下ごしらえされた食材を使い、高橋はコンビニ弁当で済ませていた生活から自作の弁当持参で練習に通うようになった。体脂肪は当初の8%から現在は5%まで絞った。体重も徹底管理し、この日は61キロ。関係者は「ベストは60キロ。フリーに合わせている」と“金肉”調整は完ぺきだ。
この日は代名詞のステップでも観衆を魅了した。中盤の直線を描くステップでは、ジャッジから最高のレベル4と評価され、驚異的な2・20点もの加点を引き出した。原点は母清登さんが勤務する岡山・倉敷市の理容店だ。ワックスの効いた滑りやすい床で、運動靴を「キュッキュッ」と鳴らしながら練習。理容店独特の大きな鏡の前で、母の仕事が終わるまで毎日踏んだステップは、世界から認められるようになっていた。
昨季は右ひざの大けがで全戦欠場した。一時は見えなくなりそうだった五輪で、現実にメダル圏内につけている。「4年前よりも自分自身成長できていると思う」。SP5位とメダル圏内からフリーでミスを連発し、8位に終わったトリノ五輪の悪夢は、最高の幕引きで帳消しにするつもりだ。【高田文太】
[2010年2月18日9時10分 紙面から]
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