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条治「かなり悔しい」銅/Sスケート

<バンクーバー五輪・スピードスケート:男子500メートル>◇15日(日本時間16日)◇五輪オーバル

 加藤条治(25=日本電産サンキョー)が、5年越しの忘れ物を取り返した。スピードスケート男子500メートルで1回目に34秒93で3位につけ、2回目は35秒07とタイムをのばせなかったが、見事に銅メダルを獲得した。06年トリノ五輪ではスタート直前の「8分間の整氷」が影響して6位に終わったが、整氷車の故障で1回目が1時間15分遅れた今回は、集中力を切らさずに表彰台を死守。「3番目」に本人は悔しさをあらわにしたが、4年間の成長をきっちりと結果に残した。

 レース直後はまるで敗者のようだった。1回目3位で迎えた2回目。トップとはわずか0秒07差。加藤には金メダルが見えていた。

 しかし、第1カーブで手をつきかけ、第2カーブでも乱れた。タイムは35秒07。3位が確定した瞬間、頭を抱え込んだ。リンクサイドで渡された日の丸を手にしたものの、その場に崩れるように倒れ込んだ。

 精根尽き果てるほど、力は出し切った。ただ狙っていた表彰台の真ん中には届かなかった。「今回は万全の状態で臨んだのに金メダルが取れなかったのでかなり悔しい。最低限の銅は取れたんでぎりぎり合格かな」と、レース後は素直には喜べない複雑な心境を吐露した。

 それでも4年間の成長の証しは見せた。世界記録保持者で金メダル最有力候補として出場した前回トリノ五輪は、直前に滑った選手が転倒して、レースが8分間中断した。それで集中力が途切れたのか、力を出し切れずに6位に沈んだ。以後、「記憶から消したかった」と、トリノ五輪の話題には口をつぐんだ。

 そして今回も、1回目の前半10組終了後の整氷作業で、整氷車が故障して約1時間15分も遅れた。しかし「トラブルは気にならなかった」という。「スタート遅れるけど大丈夫だから」。スタンドの父昌男さんに自ら電話した。周囲を気遣う余裕もあった。

 引退の危機を乗り越えて手にしたメダルでもあった。昨季の中盤戦以降、大スランプに陥った。スピードスケート選手特有の足首に力が入らなくなる通称「ブラブラ病」の影響で、「世界最速」と呼ばれたコーナリングで足が動かなくなった。山形中央高の恩師、椿央先生に「やめなきゃいけないかも」と漏らした。「あんなに落ち込んだ条治を見るのは初めてだった」(椿先生)。しかし、その後、右に崩れていた体幹バランスを地道なトレーニングで克服。昨年10月の今季初戦、全日本距離別を制すると「引退はなくなりそうです」と伝えてきた。

 「世界一のコーナリング」に頼る滑りから脱皮した。バランスを崩しても踏みとどまる、体幹の力を身にまとった。そしてトラブルにも心乱さぬ強い心も証明した。14年ソチ五輪で「三度目の正直」に挑戦する。

 [2010年2月17日9時38分 紙面から]


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