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西伸幸(上)男子唯一五輪内定も…就活中

2009年10月27日

 フリースタイルスキー男子モーグルの西伸幸(24=白馬ク)は、3月の世界選手権(福島・猪苗代)で銀メダルを獲得し、10年バンクーバー五輪の代表に内定した。冬季五輪競技の日本男子で、内定を得ているのは西だけ。にもかかわらず、金銭的バックアップを得られる所属先が、まだない。女子の上村愛子らが注目される中、五輪金メダルでのアピールを狙っている。
 西は26日、約19日間に及んだ全日本チームのスイス合宿を終え、日本に帰国した。モーグルのW杯は、12月に開幕戦を迎える。ほかの選手たちは、五輪代表の座をめぐる戦いになるが、西は男子で1人だけ内定済み。「決まっていなくても、やることは一緒だったと思いますけど、気持ち的にみんなと比べて余裕があります」と、落ち着いて練習を続けている。
 メダルを獲得すれば五輪に内定するという条件で迎えた、3月の世界選手権。モーグルは3位と0・04点差の4位だったが、デュアルモーグルで2位に入った。スピードが最大の持ち味で、山から転がり落ちるようにゴールを滑り抜ける。地元日本での開催とはいえ、過去のW杯で1度しか表彰台に上がったことのない伏兵ながら、勝負強い滑りでチャンスをものにした。
 五輪代表に内定したとはいえ、競技環境は恵まれているとはいえない。白馬村スキークラブの所属だが、金銭的支援は得られていない。昨季前も所属企業を探したが、門前払いの連続だった。不況の影響もある。用具のスポンサーはついたが、今もサポート企業は募集中だ。
 今季から、ナショナルチームでのランクがCからBに上がった。遠征費の自己負担は75%から50%に減った。1度の遠征で20~30万円かかり、1シーズンで3~4回は海外に行く。「親に甘えちゃっているけど、甘えざるを得ない。いよいよこの年になると、恥ずかしいので、所属企業が見つかるとうれしい。五輪後も競技は続けたい。五輪で金メダルが取れたら、どこか見つかるんじゃないかと思います」。
 北京五輪で、フェンシングの太田雄貴は銀メダルを獲得した。「ニート剣士」とも言われた無職だったが、メダル効果で周囲の目を変えさせ、森永製菓に入社した。西も、同じように花を咲かせる可能性を秘めている。バンクーバー五輪の目標を聞かれると必ず「金メダル」と言い切る。「金を取りたいですし、(口にするのは)自分へのいいプレッシャーにもなるから。取りたいですね」。今は、お金で買えない夢を追っている。【佐々木一郎】(つづく)

 ◆西伸幸(にし・のぶゆき)1985年(昭60)7月13日、川崎市生まれ。幼少からスキーを始め、元全日本王者の益川雄氏にあこがれて中学からモーグルを始めた。1人で長野に移り、白馬高へ。亜大に進学も1年で中退した。現在は白馬村スキークラブ所属。03年ジュニア世界選手権優勝。09年全日本選手権モーグルとデュアルモーグルの2冠。昨季はW杯総合24位。阪神ファン。家族は両親と妹2人。165センチ、65キロ。


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