メダル候補者たちの武器
アルペン 皆川賢太郎
2010年1月14日
皆川カッチカチ板で夫婦出場目指す
アルペンスキー男子の皆川賢太郎(32=竹村総合設備)が、得意とする直線的な滑りと高反発スキーで、逆転のバンクーバー五輪代表入りに挑む。全日本スキー連盟は13日、バンクーバー五輪のジャンプやフリースタイルモーグルなどの追加選手29人を発表した。発表が延期されたアルペン男子は、17日のW杯スイス・ウェンゲン大会後の発表となる。日本男子の出場枠は2。今季の成績で佐々木明(エムシ)湯浅直樹(スポーツアルペンク)に続く3番手の皆川が、持てる武器を駆使して起死回生の滑りを狙う。
皆川が17日のW杯にすべてを懸ける。代表選考基準となる今季のW杯最高成績では、佐々木が15位、湯浅が23位で、皆川は24位。最新のW杯ランクでも佐々木22位、湯浅46位、皆川49位と、皆川が3番手。17日のレース後に発表されるFIS(国際スキー連盟)ランクで日本人が30位以内に入れば、代表枠が3に増える可能性は残されているが、現状では4大会連続の代表入りがピンチだ。
02年の左ひざに続き、06年12月には、右ひざ前十字靱帯(じんたい)を損傷した。その影響で、この2シーズンのW杯で2本ともに完走できたのは2回だけ。しかし、「ここまで落ちたら、逆にやる気が出る。すべての準備はできている」と悲観はしていない。
4位に入った06年トリノ五輪ではメダルまで0・03秒。距離にして約38センチ。この4年間、その滑りを進化させようとしてきた。皆川の滑りの特徴は直線的なコース取りからの鋭いターン。一直線に滑って、旗門を前に小さなターンで鋭く方向転換する。そうすれば円を描くようなターンで滑るよりタイムが短縮できる。児玉修ヘッドコーチによると「完ぺきにこなせるのは世界でも10人ほど」。今季は不振に陥っている皆川だが、同ヘッドによると「その領域に近づいている」という。
- カッチカチ板で五輪に挑む皆川
そんな皆川の滑りを支えているのが、オリジナルの高反発スキーだ。軟らかい板は、しなりやすく、元に戻る復元時間も長いため、少ない力で簡単に弧を描くようなターンが可能だ。しかし、皆川が目指すのは直角に近い鋭いターン。それには、しなりやねじれの復元時間が短く、すぐに次の直線的な滑りに移行できる高反発の板が求められる。
皆川の板を担当するアメアスポーツジャパン・アトミック営業部の田村茂雄氏は「通常の板の約1・5~2倍の硬さ。素材の木やメタルの厚さや配列に秘密の特徴があります」と話す。今季の板には開発だけで約2年をかけ「元を取ろうと思ったら200万円以上する」という。そんな高性能の板を生かすため、昨季末から、今季W杯2勝のヘルブススト(オーストリア)の滑りからヒントを得て、スタンスを約10センチほど狭めた。広いスタンスだと安定感は出るが、力が分散し、開いた両足の分だけターンが大きなってタイムをロスするからだ。
「私生活から改めないと世界では勝てない」と、昨季からは大好きな酒を断った。モーグルの上村愛子と結婚もした。五輪に向けて心身ともに充実している。あとは世界トップクラスと評される滑りを、最後の1大会にぶつけるだけだ。【吉松忠弘】
◆皆川賢太郎(みながわ・けんたろう)1977年(昭52)5月17日、新潟県湯沢町生まれ。北海道北照高時代に日本代表入り。日体大に進学後、98年長野大会で五輪デビュー。W杯最高位は06年ウェンゲン大会の4位。08年に亡くなった父賢治さん(享年60)は元競輪選手。173センチ、85キロ。
皆川のスキー板
長さはルール上最短の165センチ。センターの幅は63・2~63・3センチ。構造は、木の板とメタルを厚さを変えながら、特殊な配列で組み合わせる。その上から「レースキャップ」という薄い数ミリのチタンのシートが薄皮のように覆っている。トップ幅からセンターまでのサイドカーブの形状も皆川独特の曲線。
回転(スラローム)
アルペンの他の4種目よりも旗門の数が多く間隔が狭いため、細かいカーブを素早く曲がることが要求される。コースに青と赤の旗門が交互に立てられ、同じ色の旗門の間を抜けていく。2本のスキー板と両足が旗門を通過しないと失格。基本的に2本滑り、合計タイムで順位を競う。男子の場合、スタート地点とフィニッシュ地点の標高差は180~220メートル。旗門数は55~60になる。
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