「ニコライが救ってくれた」/安藤美姫2
2010年1月13日
06年トリノ五輪で15位に終わった安藤美姫は、次のシーズンから、姉のように慕う荒川静香を五輪金メダルへと導いたベラルーシ出身の振付師のニコライ・モロゾフ氏に師事した。
すぐに気持ちの弱さを見抜かれた。「五輪の後、本当につらい時期があった。何で選んだんだ、という批判の声もあったので…」。しばらくは五輪の惨敗を引きずっていたが、モロゾフ氏は落ち込んでいる安藤を慰めることはしなかった。「やりなさい」と、厳しく接してきた。そんな指導を受けながら安藤の心構えは少しずつ変化していく。五輪前にはあったおごりのような感情や、失敗に背を向けるような甘さは、次第に消えていった。
- 練習前、モロゾフコーチからネックレスをつけてもらう安藤
がむしゃらな練習と、厳しい食事制限で体重を5キロ減らすなどした安藤は、トリノ五輪後、最初の大会となった06年10月のスケートアメリカでGPシリーズ初優勝を果たした。トリノ五輪から約1年後の07年3月の世界選手権(東京)では、負傷していた右肩と右かかとの痛みに耐えながら、2位の浅田真央と3位の金?児(韓国)を抑え、荒川らに次ぐ日本人4人目の「世界女王」の称号を手にした。
安藤は「ニコライ(モロゾフ氏のファーストネーム)は、私を救ってくれた」と、満面の笑みで涙を流した。中京大に進学し、トヨタ自動車に所属して再出発したバンクーバー五輪に向けた1年目は、モロゾフ氏との信頼関係を深めて、最高の滑りだしとなった。(つづく)【高田文太】
◆安藤美姫(あんどう・みき)1987年(昭和62)12月18日、名古屋市生まれ。中京大中京高卒業後、トヨタ自動車に所属しながら中京大に在学。8歳でスケートを始め、02年ジュニアGPファイナルで女子公式戦では初めて4回転ジャンプに成功。全日本選手権は03、04年と2度優勝。世界選手権は07年優勝、09年銅メダル。09年GPファイナル2位。トリノ五輪は15位。162センチ。
◆ニコライ・モロゾフ 1975年12月17日、ベラルーシ生まれ。アイスダンスの選手としてタチアナ・タフカと組んで98年長野五輪に出場し16位。その後、引退してコーチ兼振付師となる。02年ソルトレークシティー五輪男子金メダルのヤグディン(ロシア)の振り付けで一躍脚光を浴び、06年トリノ五輪は荒川静香を女子金メダルに導いた。現在は安藤のほか、男子の織田信成、アイスダンスのキャシー・リード、クリス・リード組らを指導する。
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