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高橋大輔(下)肉体改造でしなやかさ増す

2009年9月03日

 高橋大輔(23=関大大学院)は昨年11月26日、断裂した右ひざ十字靱帯(じんたい)と損傷した内側半月板を修復する手術を受けた。翌々日から、ひざを動かすリハビリが始まった。100回単位で行う足上げやスクワットなど、痛みだけでなく単調な繰り返し。クリスマスイブの退院から約1カ月半が経過した2月中旬、高橋は逃げ出した。
 高橋 退院後は、午前は9時から12時まで、午後は1時から6時までリハビリを続けるんです。午前と午後の間、家に戻ったら寝てしまって。起きたら、午後の時間を過ぎていました。何か行きたくないなって。そして次の日も行きたくないなと。1回気が抜けたというか、リハビリなんかしたこともなかったので、ずっと囲われている気がしてて、そういうのがきつかったのかもしれません。
 高橋は大学生時代、「自立していないようで嫌だった」と、ひと頃、家出した経験がある。今回のリハビリは2週間ほど無断で休んだ。病院から電話もかかってきたが「全部、ぶっちした」という。
 高橋 ある日、このままだとスケートに戻れなくなると思いました。もう今日行かないと、このままずっと休んじゃうんじゃないかって。怒られ覚悟で戻ったら、逆に担当の先生に「僕が軟化悪かったのかな」と恐縮されてしまって。もう逃げるのは本当によそうと実感した時でした。
 手帳には「目標は逃げないこと」と記した。その後はリハビリを利用して、新名井体をつくることに挑戦した。足首や股(こ)関節が硬いのが高橋の欠点だった。ステップなど速い動きは得意だが、しなやかさに欠ける。リハビリついでに、関節などの可動域を広げる肉体改造に取り組んだ。
 高橋 変な力みがなくなったんです。以前からすごく調子がいい時は、体にしなりがあると感じていて。バネがあるんだけど、柔らかいバネ。今は、調子が悪くても、体がしなるのが手に取るように分かるんですね。だから、速い動きに加えて、しなやかさも演じることができると思うんです。
 柔らかくするために、下半身に、これでもかというほどの力で指圧をされた。指圧で関節をゆるめてから、トレーニング。その繰り返しで悲鳴を上げた。
 高橋 もう無理、無理、無理!って叫んでいました。あれは鬼ですね。骨の周りの筋肉も硬いからグーッと押し付けられるんですよ。冷や汗が出るくらいの痛さでリハビリといい指圧といい、痛みにだいぶ強くなった気がします。
 昨季と同じプログラムでバンクーバー五輪を狙う予定だ。ショートプログラムはCaba作曲の「Eye」、フリーはフェデリコ・フェリーニの名作、映画「道」のテーマ曲だ。「道」では、2季前に見せたヒップホップのような斬新な演技を考えているという。
 高橋 体がしなやかになった分、それを使いたいと思っているんです。7月の米国合宿でつくって、だいぶできてきた感じです。残り1カ月半で、人前で滑れるように自信をつけるだけですね。
 7月からは、武器の4回転ジャンプにも挑戦し始めた。まだ着氷までは行っていないが手応えは感じている。
 高橋 バンクーバーでは金メダルが目標です。
 その目標を達成するため、強い心を持ち、柔らかな体を備えた新たな高橋が復活した。【吉松忠弘】


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